こちらは『分室』にて書き散らかしていたものです。
おもに1stの前中後のどこかという感じのお話を集めてみました。



   トレーニング?!

 
 ヤマトはイスカンダルから地球へ向かっていた ―――


イスカンダルでコスモクリーナーを受け取り
再び緑の大地から飛び立ちすでに2ヶ月

毎日最高速度でひたすら地球を目指すヤマト




  ただ ひたすら・・・・




「おー古代、今日は何する?」


格納庫隣のブリーフィングルーム

そこはブラックタイガーチームの集会所(?)

飛来する敵はいないし、哨戒だけの任務になりつつある戦闘班所属の飛行部隊

もちろん日々の鍛錬は欠かさないが、24時間弄ぶ時間も少なからずあったりするので部隊を取り仕切るチーフパイロットは日々何をしようか思案に頭を痛めていた。

ヤマト艦内では工作班が昼夜を問わず放射能除去装置を製作中であり、フル稼働の航海班も地球への最短距離の測定や航路の異常がないか神経を張り詰めての最大ワープの実施に過剰なほど神経を尖らしているというのに、不謹慎極まる行動を他部署に知られてしまうのも・・・と戦闘のない連日の時間の潰し方にそろそろ限界が来ていた。


「う~ん・・・・。ん?」

ふと思いついたようで、にーっと口の両端を上げる戦闘班長 古代 進

第1艦橋勤務で常日頃張り詰めた時間を使っている彼は、どうやら持ち場の責任者として各部署を点検と称して、ここには息抜きにやって来てるようだ。

もともと、童顔の古代。

少し傾けた頭を数秒考え込んだが、ピクンと顔を上げるとそれこそ何やら悪戯を考え付いたような顔で加藤を見返した。

そして黙ったまま自分のヘルメットが入っているロッカーの前に行き、何やらごそごそと中をあさり始めた。

そんな古代を黙って集まっていた全員が見つめていた。
そして次の瞬間には嬉々として振り返る古代を見て、全員がはてなマークを飛ばしていた。

「サッカーボール?」

そんなところにいつの間に!

加藤は驚き、これまで見たことがなかったボールを見つめ、また古代を見た。

そんな加藤の動きを見ていたのか、古代がニッと笑った。

そしてその両手に持った白と黒のボールが宙に浮いた。


スローモーションのような動きが、一気に100キロぐらいのスピードになって加藤に向ってくる。


思わず顔面に当たると思って右手を出して受け止める加藤。

周囲からはため息ともつかない息が漏れた。

「―――っ!!? 」

「ハンドーぉ!」

「・・・ハンドってなぁ~ ――ったく何考えてんだ?! あぶねーだろう!! 急に蹴りつけるんじゃねぇよ!! 」

自分の手の甲の感触を頬に感じ、寸でのところでそれを止めた加藤はのんびりとした声でハンドの宣言をする古代にむっとしながらも、あんなスピードのボールを止めた自分はつくづく偉いと思う。

ジンジンと痺れる手からサッカーボールを自分の足元に落とすと、ギロッと班長を見つめた。

 ♪

加藤は離れた場所で楽しそうに笑うその古代の顔が、お前いったいいくつ?って言いたくなるほど幼く見えて、怒りに叫んだ口を塞ぐことも忘れていた。

「今日はサッカーしようぜ」

おーい ここは格納庫

「基礎体力増強のためのウエートトレーニングも飽きたし、それにこれもトレーニングになる 」

そう言いながら古代は走りこんで来て、加藤の足元からさっとボールを奪う。

一瞬のその隙

右足でボールを軽く蹴り上げて、ヒールでひとつ ポンと上げ

左のひざでもう一度・・

そのまま額でリフティング

そのままそれは古代の頭の上に乗った。


「よっと・・・」

ボールは何故か古代の頭に張り付いたようにその動きを止めている。


「6×6でミニゲームしようぜ」

「おまえなー・・・」

相変わらず簡単にものを言ってくれるチーフである。

加藤は再び古代の意志で操られているボールを見ながらため息をついた。

こうなるとそれに満足するまで付き合わされることになる。

「あー! サッカーボール!」

その場にいなかった山本隊が入ってくるや否やそんな懐かしそうな声を出した。

それが一斉に波及する。

サッカー好きの奴らは古代の近くに集まっていた。

こう見ると結構多いんだなぁ。 

最初に近づいてきた鶴見にボールが弧を描いて飛んで行く。

それを頭で受け止めて、決して落とさない。

それはサッカー好きの暗黙の了解のようで、何度かそれを繰り返し次の者へと渡す。

人数が増えるとそれを1度ずつ蹴りながら繰り返す。

もちろん床には落とさず

手も使わない



一体いつまでそうしてるんだ?



ブリーティングルームから格納庫へボールと共に人間も移動して、楽しそうに続けているメンバーに加藤は声もかけられずにただ繰り返されるそれを見ていた。




「・・・・平和だなー」



いつの間にか隣にいた山本の声が暖かく感じたのは、気のせいじゃないと加藤は思った ―――








その後 結局 ワープ準備が始まるまで彼らはボールと戯れていた。


もちろん 加藤・山本も

サッカー馬鹿たちに、しっかりつき合わされましたよね~




がんばれ! ニッポン!!!




 

分室初稿 2006.06.13.
加筆修正 2009.09.30.
確か、ワールドカップ(予選)だった頃に描いたんだよなぁー(‐。-;
再び来年はワールドカップ?!
サッカー大好きです♪



 Boy meet a ・・・・



「進っ!!? 」

何日も 何日も 願っていた。

白い室内の壁に、機械的に送られる酸素

そのテントの中で まったく動くことがない幼さの残る弟

彼がその目蓋を開ける時を―――



  この世の中に 神様がいるなら 彼だけは

  俺のところから 連れて行かないでくれ・・・・! 



そう 真剣に願っていた。





全ての生き物が消滅し、全て形のあったものは残骸になっていた。

そんな中で、奇跡だと誰もが言った。


唯一 その形を残し、僅かながらにも鼓動が残っていた進


  どんな状態だっていい

  手が無くても、足が無くても・・・・

  生きていさえいれば、何でもいいから


そう願って探し続けていた数日。


身元不明の名簿の最後にそれらしき少年を見つけ、任務も中断して駆けつけたのは一体いつだろう。

あの日、耳鳴りのように空気を切り裂く音を立てながら、落ちてきた遊星爆弾はたった1発。

それでも半径2キロは地獄絵のように、それはひどい有様だった。

そんな中で、生きていた進をそれこそ涙なくして見ることが出来なかった。


 生きてくれさえいれば、どんな姿でもいい


そう願っていた。

しかし、時間が経てば、


「目を開けて欲しい」と願い

「声を聞かせて欲しい」と切望した。




軍部内で、あの惨状の中 どうして進が生き残ったのか、どうやってその場所にたどり着いたのか等々、問題になっていたけど・・・


そんなことは、今の俺には関係のないことだ。
ただ、ひたすら進の笑顔を求めた。



 ◇ 



進の意識が戻ったのは1週間ほどしてからだ―――

意識を取り戻し、最初に「おかあさん」と呟いた進。

その後、俺のいない時に取り囲む医者や軍部の諜報部の言葉に、夢うつつだった進は言葉にならない何かを叫んで泣いたあと、錯乱状態に陥ったという。


そして、進はあれから言葉を発しない

呼吸していることさえ 忘れたような そんな 虚ろな瞳のまま 時を過ごしている




 ―― 言葉を忘れたカナリヤ

 ―― 翼を?がれた天使




そんな風に 世間は囁く 

そんな弱々しい奴じゃなかったのに、悲劇を背負った少年として世間は騒ぐ。



時間は、進んで行くしかないのに・・・・
それに目を反らす様に進の時間は止まったままだ。



  目を開けろ !

  俺を見て 俺の名を 呼んでみろっ!!



そうそう軍も休めなくなった。

毎日顔を出していたのも、発見後2週間程で、その後また艦隊勤務になっている俺は地上に舞い戻るたびに、進のところへと戻って来た。

虚空のままの瞳が見つめるものは、俺じゃなくて、失ってしまった両親なのか。

現実と空想が入り混じって、今の進の心に巣を作っていると言う。

閉じ込められた記憶が、現実を拒絶し、そして中から鍵をかけてしまったようだと。

医師にそう告げられても、それを鵜呑みに出来なくて・・・

だからつい、強い口調で、そう言いながら進の細くなってしまった肩を両手で揺さぶった。

 白い壁に囲まれた中で、進は何を思うのか。


進の全てはいつまで経っても、全てを白く塗り潰しているのだろうか ―――





分室初稿 2006.01.30.
加筆修正 2009.09.30. 父と母を失った日の記憶は進が作り上げた記憶だった。
Startの中に出てくる古代君の偽りの記憶。しかし、守兄さんは現実として過ごしていました。どんなに大切な存在だったかなんて、守君には言葉にしなくても、全てだったんですよ。




  Yesterday


 わたしが 初めて あなたに 出会ったのは 中央病院の廊下だったわね

 あなたは 島くんと 私を見て とても驚いていた


   
   どうして?


 ふたりして 目を丸くして・・・

 それじゃなくっても あなたは 少年のような 顔をしていたのに・・・


 その大きな瞳が その時 とても 「可愛らしく」 見えたわ



 そんな事を言ったらきっと 頬を膨らまして

 「何言ってるんだい!」って 拗ねちゃうかしら。

 
 そんな 第一印象だった あなた

 でも、本当は 喧嘩っ早くて 意外と男らしくって

 クルクル変わる大きな瞳で 喜怒哀楽がはっきりしてるから 

 見ていても飽きないの





 その あなたの 瞳が 私を見つめる

 それは ―――

      温かく・・・・
 
          優しい




 彼の 自分の護るものに責任を感じている時の

 その 深い色の瞳が 

 いつのまにか 私の心の中に 残ってしまったの




     それは いつだったかしら?




 そして あなたが私を見る瞳が それと 同じに思えるようになったのは


     いつ だったかしら・・・・?


 たった1年と言う期限付きの航海は、死に物狂いの日々だったけど

 それでも別の意味でドキドキすることもあったの


 だから、あと少しで地球と言う時に、地獄を見た気分だった。


 汚染されてゆく艦内で、慌しく動く彼の後姿を見送った時から

 もう何が何だか解らなかった。

 
 『隠れていろ!』


 そう言われた後、戻りもしないで真っ直ぐに工作室に駆け込んだ

 そう表情を崩す事のない真田さんが 怒ったように言った言葉に

 『でも・・・! 

   でも!!  古代くんが  死んじゃうっ!!! 』

 って 叫んだ記憶だけが 残ってる



 私の瞳も あなたを見る時 同じ色になっている・・・?


     そうみんなに言われたわ



 神様!

 私の命は あの人がいるから 喜びを感じるの

 あの人がいて 私の心が 温かくなるの

 だから お願い 古代くんを助けて!!





 いつも無茶ばかりしている彼

 そんな彼だから 無茶をしても すぐに手当てが出来るように 見つめていたい

 それが私の願い


 だから―――


    だから 私から 彼をとらないで・・・・!





 遠い過去の記憶

 でも そう昔に思えない つい最近の事

 それは 決して忘れない 大切な真実に気づいた記憶





分室初稿  2005.12.29.
加筆修正 2009.09.30. 雪と古代君の視点で描いてあったのを雪だけの視点からにしました。でもまだまだだなぁーって思っちゃいます。


 
  訓 練 


 艦長から、彼女の戦闘機の操縦と射撃訓練の指導をするように言われた。

 僕は一瞬、「え?!」という気持ちと「やったー」という2つの
 反する思いを持って艦長を見た。
 艦長は、そんな僕のことを「わかっている」といった様子で見ていたが、
 僕からその視線を窓の外に移した。
 「古代。ヤマトは戦艦だ。艦内といっても、何が起こるかわからん。
 それに、森は生活班長としてそれなりの立場もある。
 ・・・それに森からの申し出なんだ」
 「は? 自分から艦長にそう申し出たんですか?」
 暗い窓の外。窓に映る艦長の顔に僕は驚いた顔をしていた。

 何だって、自分からそんなことを言い出すんだ?

 「生活班は基本的には非戦闘員です。
  それに、彼女は偵察機の操縦だって出来るし射撃もレベル3で、
  非戦闘員としては問題ないと思いますが」
 「まあ、そうは思うが、本人が必要と思っているんだろ。
  時間があるときでかまわんから、教えてやってくれ。
  ・・・・それに、今後何が起こるかわからんからな―――」

 外宇宙に出たヤマト。
 ガミラスとの戦闘が今後激しくなることは解かっている。
 それに、太陽系外に地球の艦としては初めて出たのだ、
 人類が把握していない未知のことが起こるかも知れない。

 艦長の言葉の裏には、彼女の運命を左右することになるかもしれない・・・
 ということだろうか。

 僕は軽い溜息をついて、艦長室を後にした。


 「森君。艦長から話は聞いた。・・・僕が担当する
  ことになったから君のスケジュールを教えてくれ。
  僕のとすり合わせて、空いている時間に射撃の訓練と
  戦闘機の訓練をするから」

 第一艦橋で彼女の席の隣に立って僕が言う。
 艦橋にいた僕と同期の奴らが「え?!」と驚いた声を
 あげていた。
 それとは反対に彼女は笑顔で僕を見上げている。
 「ありがとう古代くん。すぐにスケジュールを
  送っておきますからよろしくお願いします。」
 その笑顔に僕はまた溜息をつく。
 「・・・本気かよー。」
 「戦闘班長の指導じゃ、すぐに根を上げるよ」
 南部と相原が顔を見合わせつぶやく声が聞こえた。
 ふたりの言葉の裏には、僕のそれに対する姿勢が普通よりも
 厳しいことにあるらしい。
 そんな言葉は当然彼女にも聞こえる。
 「本気なのか? 戦闘機訓練はキツイぞ。」
 どちらにしろ、生死に関わる事だから、僕としては出来る限りの
 ことを身につける必要があると思う。
 だから、「教える」となれば、命を永らえることの方へ力を入れるのは
 当然だろう。
 「解かっています。だけど、必要だと思うから・・・」
 「そうか。じゃあ、覚悟しておいてくれよ」
 溜息の中に、言葉を飲み込む。
 戦闘機は敵を倒すってことが最優先だ。
 そこまで深くは考えていないだろう生活班長は、レーダーを
 自動にセットすると生活班長室に行くと告げて出て行った。

 僕が自分の席に着くと島が顔を向けた。
 「ご苦労さんだな。」
 「・・・わかってんのかな、森君。」
 僕の言葉に島は表情を曇らせる。
 「そこまでは考えてないんじゃなのか?」
 そして視線を僕から彼女の席に移してそう言った。
 島も僕と同じことを考えているんだろう。
 その顔も複雑そうだ。
 「『必要』って言ってたけど、本当に必要な時が来なけりゃ
  いいんだけど・・・」
 「そうだな。彼女には笑っていて欲しいよな」
 「そうだな・・・」

 それは恐らく誰もがそう思っていただろう。
 僕たちの溜息の意味なんて、きっと知らずにいる彼女が
 ちょっと恨めしく思う。

 こうして、僕は雪にその訓練をすることになった。





分室初稿 2005.10.16.
2009.09.30. 転記 これって秘書物語にあるかも・・・(^^ゞ



  

この乾いた大地に雨が降ったのは何年ぶりだろう。

真田志郎は、科学局の技術部中央会議室の大画面を見ながらそう思った。

どんよりと黒い雲。そして大粒の雨。

ガミラスの遊星爆弾は地球から水を吸い上げ、そして海を消滅させた。

7大陸は地続きになり、赤く爛れていた。

あの美しかった青い地球。

宇宙の宝石と称えられた星。

それを思い出すことさえ難しいことのように思われた。
だが、イスカンダルから持ち帰ったコスモクリーナーDは確かにその機能を発揮して、地球の大気を回復させた。

  こんなことが出来るのか?!

地球上の科学力では、到底無理な話だ。

 ヤマトの出発前、大気・電離層に関しての特別委員会が出した検討結果は「常識では不可能」と言うものだった。

理論的には可能だろうが、地球の科学力では及ばぬこと・・・

 当然だ。これはイスカンダルの科学力だから

真田は思った。

たった1週間であったが、あのイスカンダルでの生活はとても地球では叶えられないものだった。
地球の科学力では、人類の知識では考えもつかないことが溢れていた。

科学・医術ともに優れすぎている。



  ――― 雨が、一気に大地を潤した ―――



会議室内にいた部員・局員たちが一斉に歓声を上げる。

「やりましたね! 次長!!」

「そうだな・・・」

帰還して3週間。

真田は初めてゆったりと椅子に凭れ、大きな窓に降りつける雨を見つめた。



分室初稿 2005.10.09.
加筆修正 2009.09.30. 
亜空間通信分析室では、真田さんの技術と科学力向上を切に願っています。
でも、ヤマトの中からこの雨見てるはずだったなぁー・・・



  身体検査


ヤマト艦内の定期検診の日。

生活班長の森雪は朝から大忙しだった。

ガミラスからの攻撃がこのところ無いにしろ、いつ始まるか解ったものではない。
それにそう言うことに逃げ回る輩もいるのだ。

雪はそんなブラックリストに載る者たちの立ち回り先に先回りすべく早朝4時に起きた。

「古代君!」

その声に艦長代理の進は思わず首をすくめた。

そこは射撃訓練室。

まさか こんなところまで・・・・

と目一杯のため息をついた艦長代理 古代進

彼は100点と表示されたスコアボードをちらっと見たから、コスモガンをフォルスターに戻してフォールドアップ状態になった。

カチッと安全弁が戻される音がする。

「今回はきちんと検診を受けていただきます からね!」

自分自身に照準を合わせられては、そうそう逃げるわけにも行かない。

振り返った古代に、銃を降ろして仁王立ちの雪はニッコリと微笑んだ。

その顔に進は深く溜息をついた。




分室初稿 2005.10.06.
加筆修正 2009.10.07. これって「新緑の季節」のモトだったみたいー(^_^;)




分室を全く更新しなくなってしまったので、こちらに移行しました。
これからちょっとでも増えて行くといいけどね
2009.10.07.
Material by Simple Lifeさまとネットマニアさま