こちらは分室して書き散らかしていた
おもに2nd前中後あたりのお話を集めました。



  安らかなとき  


また どこかで 誰かが 呼ぶ声がする


ずっと この腕に抱きしめていられたらよかったのに・・・

誰に何を言われても 君の手を離さなければよかったのに



すべて 今となっては 後悔ばかりだ ―――



 「島君 ・・・・ 」


 「雪・・・。 君たちは早く結婚した方がいい」


この先 どうなるかわからない
俺みたいに 辛い思いをするかもしれない
一度ぐらい 女性としての幸せを
その喜びを知ったって いいんんじゃないか?


あいつはどう思っているんだろう。


俺は こんなに後悔してばかりなのに
あいつの中では そんな不安がないのか?



  “恋” というにはあまりにも急速で

  “愛” を語るには 時間もなくて



ただ 抱きしめた腕の中で その暖かさがすべてを卓越した想いだった


この人を 幸せにしたいと願ったあの時

同時に総てを捨ててもいいを思った


一瞬だけでも 地球の未来なんて どうでもいいと思ったのに !


それでも やはり地球には大切な人たちがいて・・・・


自分の護るべきものが何なのか それはずっと心の中にある

だから 戦いの中

彼女への気持ちを抑えつけて

想いを未来に摩り替えて ―――


  あいつは いつも 顔を上げ 前を向く


  疲れて果てて 何もかも 失っても

  分かち合おうとする人がそばにいることさえ忘れよとしている・・・


  バカだなー・・・

  また 後悔するぞ

  俺みたいに なるな・・・


  そう言わなくっちゃな


  そう言われても きっと お前は 何も言わずにいるだろう

  今度 あいつにあったら 絶対に 言うんだ

  そう思っていたけど ―――






『 島さん 』


包まれるその暖かさ

柔らかな光のような 安らかな 空間

いつまでも その身を 預けていたい

君から 抱きしめてくれるなんて

嬉しいような 恥ずかしいような

自分の身体が 自分のものじゃないような そんな感覚で

でも 僕は君を抱きしめることが出来ない


 なぜ?


胸に落ちる 君の涙

触れる 唇


ひとつひとつを はっきりと感じるけど

残念な事に 僕は何一つ 君に返してあげられない


「 ・・・・・ 」


わずかな うめき声に 君は ふと顔を上げて

それから ポロポロと 涙を流しながら また 僕を抱きしめてくれたんだ



   愛しているわ



そう呪文のように繰り返しながら

何度も何度も 囁かれた言葉


僕は ほっとして その光の中に 包まれたまま

意識が 消えていくのを感じていた

それでも 今度 目が覚めたら 必ず言おうと思っていたんだ・・・・



分室初稿 2006.02.20.
加筆修正 2009.10.01.
GreenDaysの序章みたいにあちこちに書き綴っているんですが、これがなかなか手を焼く事です(^^ゞ
島君とテレサって限りなく透明で淡いんですもん





 存在


食堂に向かう 雪の後を 好色顔をした空間騎兵隊の斉藤がくっついて行く。


「なあなあ、いいじゃないかー 」


そういいながら、斉藤は雪の左右を覗き込んで、ヘラヘラと愛想を振りまく。

泣く子も黙らせるアラクレの空間騎兵隊隊長だなんて、こんな斉藤を見たら思いもしない。

ただの女の尻を追っかける 助平な男だ。


空間騎兵隊という男ばかりの集団の長を務めている斉藤を冷たく突き放すわけでもなく、しかし雪は怒りもせず、だからといっていつもの笑顔を見せるわけでもなく・・・・

表面上、いささか困ったように眉間に皺を寄せて、明らかに困惑した表情に唇をキュッと噛んで先を見て歩いている雪。

ヤマトの艦内で、雪に対してこんな事を繰り返す者はいない。

それにこんな経験が無いわけでもないだろうが、それでもこうもあからさまな態度で誘ってくる男に嫌悪感を感じないわけも無かっただろう。

一層雪の顔が憂いが満ちる。

悪循環で、それが斉藤の熱を上げさせるのには充分すぎるようで・・・

唾を飲み込み、ついには雪を公道(通路)の壁側に押し込み上から赤く染まった目で雪を見る斉藤だった。

「・・・・!」

眉間に皺を強く寄せ、怒った顔をした雪の頭の左右に斉藤は両手をついて逃げ場をなくす。

「なあ、いいじゃないか・・・・ 」

擦れた声で、にじり寄るように熱くなった下半身を雪に近づけて行く。


こうも周囲を気にしないで自分の欲望だけで行動できるもんだぜ。


見かねて俺は斉藤のその背中を蹴りつけようと近づいた。

それを山本の手が引き止めた。

それに振り向こうとした瞬間、斉藤の右腕が誰かの手で掴まれ捻り上げられる。

「! くそっ!! いてーじゃねぇか!!」

掴まれた手首があきらかに不自然に奴の背中に回される。

あまりにも痛くて斉藤は左手も壁から離して、手を掴む相手を睨み付ける。


「やり過ぎだ 斉藤」

どこから表れたのか、古代が戦闘中のオーラを纏って立っていた。

「雪はヤマトの戦士だ。生憎と躾のなっていない男達を慰めるためにいる訳じゃない。」

珍しくはっきりとした言葉で斉藤を諌める古代。

艦長代理としてか、それとも婚約者としての制裁か。

どちらかと言ったら、古代のそれは前者の方だろう。

「これ以上ヤマト艦内で生活班長にちょっかい出すようなら、艦長代理として 私も処分を出さなくてはならない」

周囲は古代の戦闘班長としての言葉に出来ない威圧感と強い統制力で、斉藤を完全に抑えたように見えた。


戦闘時のあのオーラに包まれた古代はそりゃあ、同じ歳とは思えないほどの迫力がある。

雪から斉藤を遠ざけながら間合いを取る。
その間も、張り詰めた古代のオーラは消える事が無かった。

しかしそんな古代に向って斉藤はニヤリっと笑ったのだ。


「ふーん。 『処分』。いいねぇー。・・・・ やれるもんなら やってみろよ!」


不敵な顔で、百戦錬磨に鍛えられた男の顔をした斉藤は鼻先で笑ってそう言った後、古代の後ろに庇われる雪を上から下へと視線を動かす。

古代はそれには何も言わず、斉藤から手を離しそして雪に向こうに行くよう指示をして斉藤の真正面に立った。

雪が俺たちの方へと小走りに近づくと、古代は斉藤に近づいた。

「テレザートへ近づいているといっても、確実な情報は得られていない。それにいつ白色彗星との戦闘が始まるかわからない。」

じっと斉藤を見つめ、この手探りの状態の航行でも俺たちの動揺を広げるようなことはしない古代。
艦長代理のして自分の有るべき姿をどんな時でも忘れる事がないのはあまりにも清くて崇高な感じがする。

だが、一瞬だけ古代の空気が変わった。

「無事この危機を乗り越え地球に帰還できたら、その時・・・。艦を降りてもまだその気ならその時に話を聞こう。」

空気の変化に山本も気づいたようだ。
ふと、隠れている左目が見えるほど急に顔を上げて古代を見つめていた。

だが、斉藤はそんな事など気づかなかったのか、それとも気づいていても気づかない振りをしたのか・・・

「けっ。 ずい分と余裕なんだな 艦長代理よぉ 」

一瞬、先日のような殴り合いになるのかというような空気を漂わせたが、それもすぐに消えた。

古代はもちろん手を上げなかった。

それどころか、纏っていたそのオーラが完全に消えた。

「余裕なんてないさ。雪は雪自身のものだ。俺のものでもなければ、ほかの誰のものでもない」

斉藤の表情が変わる。


雪に抱いていた欲望が、ただの欲だと気づいたからだろうか・・・。
         こと
そしてふたりの関係に気づいたのだろうか。


古代に握られたその手首を軽く掴んで、痺れを消すように振る。

斉藤は笑いを含んだ顔をしていたが、ふと視線を下げると苦虫を潰したような顔になった。


男なら 一度ぐらいは思うだろう。

あんなに可愛い女を自分の自由にしてみたいってな。


ヤマトにいる限り雪は女であっても女じゃない

そう見ている俺たち。

もちろん 古代にしてみればそんなことは当然で。

だが、そんな風に思わない奴もいるってことは充分知っている。

だから古代は自分の立場を重ねないようにして、雪との間もそれとなく区別している今回の航海。

雪にしてみても、古代に守られることはあってもそれを当然とはしていないしむしろ意地を張ってる部分が古代に対してはあると俺たちは感じている。


そんなふたりなのに、知らない者の中では雪の存在を、ある欲だけに募らせるヤツもいるだろう。

古代も雪への思いを欲だけで費やせていられたら・・・・

任務なんて放り出せるようなヤツなら、あんなため息もつかないのかな・・・。

なんて思いながらも、それでも俺たちは何を言ってやる事も出来ない。


「艦を降りたらだな」


「ああ」


古代はそう言って、もう斉藤を振り返りもしないで俺たちとは反対の方へ行ってしまった。


それを見送った後、俺は黙ったまま立ち尽くす斉藤の背中をぽんと叩いた。





そんなことがあったのは、テレザートまでまだ数日かかる距離が残っていた頃のことだ。




分室初稿 2006.02.11.
加筆修正 2009.10.07.
狙われた雪ちゃん〜(*^。^*) 危ない危ない・・・斉藤君はとっても強烈に雪を誘って落とそうとしてたんじゃないかなぁーと思ってます。






 VOICE  


 信じているのは君の声

 ただそれだけが 頼り



 何の? ―――

         何の 頼りなのか・・・・


 通信機から 細くて 淋しそうなその声だけが君の存在を 現している

 君は誰だ? 一体 どこにいるんだ?

 どうして こう闇雲に 通信を送っているんだ?


 寝ても覚めてもそんなことばかり考えている自分がいた。



「あの通信です!!」



相原がそう叫ぶ。

それに操縦を自動運転に変え 席を立つ。


「こちらヤマト! ヤマト航海長 島大介!!

 君は誰だ!! どこからかけているっ!!! 」

そう言いながら 思わず通信パネルを叩いた。

 
  どうして 地球へ

  何故 そんなに辛そうな声で・・・・

  何を伝えたいんだ!


  ヤマトの行き先を君だけが知っている

  いや 君の所が ヤマトの行き先だ

  だから 早く君の居場所を知りたい

  そう思っているのは 僕だけじゃないはずだ


何度目かの 通信

それは不安定で 消えそうになる事も多く

途切れ途切れでも 君の存在は確実に 君の言葉は 君に近づいていることを告げていて・・・・

そして それの伴い 敵の攻撃が激しくなって

確かに 君の元に近づいている証だったのだろうか


   君の元に 確実に近づいている


   早く 早く 会いたい 


   そう強く感じるようになっていった ―――





分室初稿 2006.01.15.
加筆修正 2009.10.07.
島君とテレサのお互いを探り寄せるような通信は、そりゃぁドキドキしたものですvv
古代君はそんな島君をどう思っていたんでしょうー

 


  紅い宇宙(ソラ)


 巨大な赤色巨星がその空間を埋め尽くしている


 深紅に近い母艦より 鮮やかな真紅


 それに キラキラと眩いきらめきが そこには 浮かんでいた―――





   何故だ―――




 自分の想いに気づいたばかりだった


 その 想いを伝えることは出来なくとも

 それでも 君に ひと目 会いたかった

 そして 潔く 別れを告げ

 旅立とうと 思っていたはずが・・・・






    その 煌きは


    美しかった イスカンダルの大地にあった


    ダイヤモンドのカケラ





  
  君と一緒に この宇宙に 漂うのか―――






  もう 2度とは 会えないのか






  想いの姿が 宇宙に浮かぶ


    君が 『永遠に 愛している』 と 告げながら


    別れを告げた相手は 静かに頷いた


  それを  ただ 見ているしかなかった ―――







   「 総統・・・・! 


    ヤマト艦長代理 古代さまから 通信が・・・  」







    「 上甲板にて 会おう と 伝えてくれ  」








  こんな私を 見られることも




  この想いを ほかの誰に 気づかれることも




  もう いらぬ ―――







  君への想いは ・・・・ 誰にも・・・・






  失うことが こんなに辛いものとは 思いもしなかった






     「 デスラー総統  」



     古代の その傷ついた表情に

              自分の姿を 映し返る


     私の 想いは ―――




     「 ・・・・心配は要らぬ 


       幾年 流離おうとも 必ずや 母なる大地を


       私は 見つける ―――  」




     「 総統・・・・! 」







     「 さらばだ ! 古代  」







      また いつの日か 会うこともあるだろう


      その時は 私も もっと強くなっているはずだ 





 真紅の赤色巨星に 煌く小さなもの

 それは スターシャ

    君の 限りない 愛しいものへの

    想いなのかもしれない ・・・・・




分室初稿 2006.01.07.
加筆修正 2009.10.07.
デスラー総統のモロイ部分をイスカンダルの散ったダイヤモンドと重ねてみました。
総統は本当に繊細な人だと思います。





 星の瞬き 


 「おい! しっかりしろ!! もう少しだ!!!」

 『もう少し』なんて そんな事は『ない』。

 俺は、そんなことを内心思いながら 叫ぶ。

 第11番惑星は岩だらけの なんの 色気もない星だ。

 そこに派遣されてもう1年近く。

 俺たちは 女っけのない野郎ばかりの 空間騎兵隊

 泣く子も黙るほど イカツイその面構えも 

 俺たちの今までの生きてきた証だ。

 その上 俺たちの 体中に出来た傷

 これは 特別な女しかしらない。

 そんな『特別な女』のいないこの星で このまま 逝くなんて

 そんなことは 俺たちは考えていないさ!

 いい女に抱かれて 逝くのが 本望だからさ・・・





 「次! 誰じゃい!」

 宇宙戦艦ヤマトが 偶然にも 俺たちの救出に来た。

 それは本当に 天の助け。

 いや 俺たちの日ごろの行いの成果だ。

 暖かく そして 清潔な 医務室

 小煩い親父が 小さな眼鏡を上げて俺を見る

 その横に立つ 白百合のような 女

 何で こんな艦に こんなに綺麗で 可愛らしい女がいるのか解からねぇが こんな『戦艦』には 不釣合いだ。

 「はい、斉藤さん。 あなたの番ですよ」

 白衣から伸びる足が やけに 印象的な女は 少しだけ 俺を覗き込むように 膝を曲げ 頭を傾げて微笑んだ。

 それに 俺の中で何かがはじけるように広がった。


    なんて いい女 なんだ



  ◇ ◆ ◇



 
 そんな 『いい女』が 誰を 一番 大事にしていたのかを

 俺が知るのは そんなに時間がかからなかった。

 そして それを知って 俺は 「ちきしょう!」 なんていいながらも 妙に納得したんだ。

   やっぱりな。

 本当は 航海長だと思っていたんだが 

 まあ あいつか・・・・ それなら 仕方ないか。

 と 思ったのだ。





 白百合の彼女が 泣くのは嫌なんだ。

 だから・・・・


 「俺は お前を アニキのように思っていた。

  

  アニキ


  
  立派な艦長になれよ 」



 お前の泣き顔も 見たくないぜ



 そうして 俺は 拳で そっと アイツの頬を殴る真似をする


 「じゃあ 真田さんを よろしくな」


    それから お姫様を 幸せにしてやれよ・・・・


銃弾が奴らを祝福する拍手のように聞こえたぜ。

それをかい潜り、俺は機関部に辿り着く。

敵は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。


走る俺に攻撃が集中しないように援護していただろうあいつの銃は 俺が着くのと同時に 引き金から指が離れたのだろうか

入り口で振り返ると呆然とした顔で 立ち尽くす あいつが見えた


 「もう大丈夫だ! お前は 早く戻れ! 

 真田さんを連れて ヤマトへ帰れ!」


俺は空間騎兵隊の隊長だ

こんな修羅場は何度も通り過ぎてきた

だから任せろ


顔に出る癖は直した方がいいぜ 

艦長代理よ・・・


苦しそうに歯を食いしばった古代の目から 流れるものが

振り返った拍子に宙に散らばった


あばよ 古代

雪と幸せになれよ


胸に抱え込んだ起爆装置

それが起動すると 雪の笑った顔が見えて すべてが真っ白になった







分室初稿 2005.12.18.
加筆修正 2009.10.07.
男らしい斉藤君は最後まで漢だったんだろうなぁーと思ってます。
正直な男って色気がない分ほかでかんばってるなーと思います。結構好きなキャラです。






 再び


 誰かが歩いてくる!

 その足音に 全神経が張り詰める


 慣れている。
 いや。
 慣れるはずのない ことなのに。

 だが、自然と身体が覚えている。

 だから 動く。



 足音からして そいつも 緊張していることが感じられた



 頬に熱を感じながら それが 熱い ということよりも

 メラメラと燃え盛る その爆撃の炎に

 怒りが ―――

 この街の至る所から 発せられる呻き声に 交じり合う




 ――カツン!! 



 微かな音だったが 俺にはわかる

 その足音が止まる

 俺は目を凝らして その硬いコンクリートの滑走路を睨んだ
 
 地面に 剥き出しになった 赤い土・・・・

 それはまだ癒えていない傷の名残だ



   情緒的になるな!



 赤い土をみて 俺の心は 乱れる




   そんなことに浸っている場合じゃないだろう!!?

 そう思いなおして 自分の女々しさを罵った

 炎がまた 一段と激しく燃え盛る

 バチバチと音を上げる


    俺たちは また 何もかも 失うのか?


  空を見上げれば 制圧を果たした 敵機が 飛んでいる

 頬に 落ちるのは 煤の混じった雨粒

 黒い涙のように 流れる雨は

 突然 堰を切ったように 降り出して 地面を染めて行く ―――



 地球人類は 再び 平伏せられるのだろうか ・・・・

 いや 決して 自分たちの希望も 未来も

 無くさない


 そう心に 刻み付けるように 雨に身を委ねた





分室初稿 2005.10.28.
加筆修正 2009.10.07.
永遠のあの滑走路でのことです。
この後 雪と逢って・・・とつづくのですが
古代君と雪の一瞬の逢瀬
アレを演出した守君はさすがです。