キリリク
50000






 地球暦23世紀初頭2月某日

 ヤマトはこれまで数度の交戦を交えていたガルマン帝国に捕獲された。




 それは、俺たちの戦いに決してあってはならないことだった。







            魂を抱いて ―――――








 メインパネルに現れた彼に俺は言葉を失っていた。







 心のどこかでひっかかっていたことが、それが全てひとつになった時、俺は自分の置かれた立場を忘れた。

 交わされた少ない言葉

 だが、それは確かに現実で、俺を冷静にさせて行く。

 俺は無意識のうちに次の行動に移っていた ―――――








 †   †   †


 防衛軍の藤堂長官へは、すでにその一報は伝えられていた。

 そして俺の報告を受けた長官はその直後連邦政府へその事態を報告していた。


 一軍に属する兵卒である自分には全てが明らかになった今、たった一隻の艦長でしかない俺の判断だけで動くことは難しい。

ましてや、俺たちはひと言では言い尽くせないものがある。

それが個人的な感情だと思われることも憚られる立場だった。

だが、デスラー総統の申し出をその場で切り捨てることも出来ず彼らの国 ―― ガルマン・ガミラス ―― を訪ねることを俺が即答していた。

それに関しての地球の判断は様々な思惑が交じり合っているとしても、その決断に快諾を見せ、今ヤマトは東部司令部であるあの要塞から教えられた彼らの母国に向かっていた。



 デスラー総統は、要塞最高責任者であり、東部方面軍司令長官でもあるガイデル将軍に案内をするように命じていたが、それは丁重に断った。

 彼らとしてみても、総統の命令であろうと心情的に、ヤマトに全面的な善意を持てるわけもないだろう。

 それに我々も、もう一方の巨大な勢力であるボラー連邦にこのことがどう伝わるかということも危惧している。

 今更だが、彼らの中には地球の中立などは認められないし、すでに敵とみなされている上にこの状態ではガルマン帝国の属国になったと思われても仕方ないかもしれないから。

 それでも俺は自分たちの立場は自分たちで貫き通さなければ、と思っていた。



      それに ―――――











 地球は日々地上の気温が上昇している








 美しかった7つの海はまた干上がり、覆われていた赤い大地は再びその表面を露呈させている。








 そして我々は第2の地球を探している






 それは闇雲ではないが、期限のある詮索行動は微妙なところでバランスをとっている状態だ。






 そしてそれは乗組んでいる全ての隊員がそんな状態であり

 俺自身も そうかわりない状態だった・・・・・・・・










 †   †   †




 「 とにかく、デスラー総統の申し出だ。 判っていると思うが、よろしく頼む 」

 そうメインパネルの中の藤堂長官がいつもの厳しい顔をして言う。

 このところ変わることのない表情。

 それはどんな時でも、そのひと言が全てを左右する場所にいる人だからだろうか。




 判断力・決断力・機動力の優

 大統領の立場とは違う影の部分である存在。

 なのに、それを感じれば安心でき、そしてその言葉に強い勇気が与えられる。





 藤堂長官の言葉に俺は微かに目を細め、頷くことでその答えを返した。













                  †   †   †   †   †   †












 艦長室の一角にある3D その宇宙図の1点が光っている。



 それはガルマンガミラスの場所



 それを見つめながら俺は深く息を吐いた。








    デスラー総統

    あなたとはもう決して交えることがないと思っていた。






 一国の、いや これほどの大国になれば仕方ないのかもしれないが、彼との間にある絆という目に見えない何かが、それは偽りのことだというように指の間をすり抜けて行くように思える。

 信じていたのは俺だけだったんだという思いがどこからともなく湧き上がり、俺の意識を波立たせる。



 俺はもう繰り返される思いはしたくない。



 出来れば「地球のため」という大義名分もいらない。



 君との間にはお互いに『盟友』という思いがあればいいだけだ。






    それも、難しいことなのか・・・・





 思わず漏れるため息

 自分でも嫌になるほど気分が落ち込む。



 ちょうどその時、微かに扉を叩く音がピンと張った空気に響いた。



 「 はい。 」

 俺はモヤモヤした気分を切り捨てるように平静さを装い、いつもの声で返事を返しその扉に顔を向けた。



 「 森雪です。 艦長 よろしいでしょうか? 」


    雪 ―――


 張り詰めていた頬が緩む。


 「 ああ、いいよ。 」


 自分自身、なんて調子がいいのかと思う。


 雪の存在がそうさせていることが、他に人がいたらわかるほどの変わりようだから。


 軽い金属音がして、扉が開く。

 そしてそこに小さい救急箱を持った雪が入って来た。

 俺はそうか、と思って時計を見た。

 そして椅子に座ったまま雪を見上げるように視線を向けた。

 「 ごめん。 そんな時間だったか。 すっかり忘れてた 」

 俺の言葉に雪はやっぱりねと言うように微笑んで、それから少し離れた場所で立ち止まると小首を傾げその瞳を少しだけ丸くした。





 点滅する宇宙図

 それからデスクに広げられた書類

 いつの間にか画面が暗くなっているPC



 それらがしばらくの間、俺がボケッとしていたことを告げていたから





 雪は持っていた箱を置くと、散らかった書類を丁寧に拾い集めた。


 「 時間になってもいらっしゃらないから、てっきり土門君たちがまた来てるのかって思っていたんですよ 」


 俺はPCを閉じながら雪の言葉に苦笑いを漏らした。


 「 いや、もうその件で来ないだろう。 来たとしても同じだって。 俺は決めたんだからさ 」


   デスラー総統に会うって。


 それは地球の時間が瀕しているしているとしても、今 この時に彼に会わなくてはならないって全身で感じるから。


 俺の言葉に雪は微かに嬉しそうに笑う。

 「 あなたらしいわね。 ―― よかった・・・ 」


 土門たちがガルマン帝国を訪ねることをよく思っていないことは十分知っている。

 それが決まってからもう何度このことであいつらと話をしているか。

 そして何度こうして雪に足を運ばせたか・・・。

 雪はため息交じりの言葉を呟き、そして俺の顔を覗き込む。

 それに俺は一度立ち上がり、そして艦内服を脱いで、椅子に座った。

 そしてその白くて細い指が、白い包帯を魔法のように外してゆくのを見るともなしに顔を向けていた。



 布擦れの音だけが響く。



 そして時間を止めさせようとする感情が沸き起こるのを紛らわすように、俺は窓の外に意識を向けた。










       俺とデスラー総統の間にあるその思いは

       やっぱり俺のそばにいるこの人が起こした奇跡








 あの空間で、復讐に燃える総統の炎を消し、気づかせた思いは君が彼の想いの人と重なったからだろうか。






 ほとんど意識のなかった俺は、その時のことを覚えていない。

 ただ、右の肩が熱くて、心臓がそこにあるように耳元で騒ぐ。

 握っているコスモガンの感覚も次第に消えていた ―――





  ――― 古代君っ!!!!




 そう聞こえたのが最後、歪んで見えていた艦橋が真っ暗になった。


     ああ、俺 ・・・・

     死ぬのかって思った。 

     このまますべてが帝国のものになるのかって思って凄く悔しかった。



 でも、その体を包んだ暖かさに君をこんなに危険な目にあわせている自分への不甲斐なさを感じつつも、何故かホッとしたんだ。







 †   †   †



 雪のその暖かい手があの時と同じ場所に出来た治りの悪い傷口に薬を塗ってゆく。

 「 ・・・・っ ・・――――  」

 「 痛む? 」

 ひんやりとした感覚に痛いわけではないが、思わず息が詰まる。

 それに気づいて一瞬手を止め、そして少し屈んだ状態で雪が心配そうな顔をする。

 僅かに眉間に寄せた皺。

 胸元からくびれた腰にかけて視線を降ろすと、膝頭が見えるナース姿の雪。

 思わず、どきんと心臓がなった。

 「 ・・・いや、大丈夫 」

 慌てて目を逸らし、息をついた。

 久々に雪の自分に対する無防備さを感じた。

 そして無意識に心配する素の顔。

 気を許しているからこそ、こんな顔をするんだろうけど、目のやり場気持ちの置き所に困る。


 「 ・・・・・ 」


 艦内において俺と彼女は艦長と生活班長

 その立場をお互いに貫き通そうと思っていた今回の任務。

 当初の苛立ちはすっかり消えた今、こう純粋に任務に携わっている時の彼女に心拍数が上がる。

 こんな気持になるのが俺だけじゃないって言うことはそれなりにちゃんと理解しているらしい彼女は、ほかの者たちの前ではいつでも『生活班長』であるのに・・・。

 今の俺は最近身につきかけたポーカーフェイスが作れない。

 何だか顔が熱い。

 雪は俺に安心しているから一層可愛い顔をして俺を見るんだろうけど


   だけど・・・。

   こらこら、俺は『艦長』だけど、ひとりの男で・・・・

   それに 君の婚約者なんだよなぁ・・・、確か ――――


 訳の判らないことが頭の中で駆け回る。

 それに、さっき聞いた相原のひと言が拍車をかけていた。


    ・・・・・


 その上、この傷を負った戦闘で、彼女から意外な言葉を聞いた。





  『 ここにいる間は、あなたはずっと私ひとりのものね 』





 冗談とも思える軽い調子でそう言った雪の頬はほんのり赤く、閉じかけた小さな口が艶やかに微笑んでいた。


 

  『 ばっ、・・・・ 何いってるんだ! 』




 思わず否定する自分を他人事のように感じていた。




 それは雪の、いや俺にとっても本音だから。




 女性に言わせる言葉じゃないって思ったけど、このヤマトの中でそれを冗談として言うこと以外、自分の感情を表せない。


 お互いさまの立場だったから、それに助けられた俺。





 だから、太助たちの消えた後、思わず本音を漏らすように雪を抱きしめた。

 そしてまだ生きていることを実感し よかった と思った。



   ――――― 、





 お互いの中にあるその気持ち。

 それを確かめるように、ただの恋人同士になるとその大切な人を抱き締めたんだ。








 しばらくそれに逆らいもしないで顔を埋めていた雪は、ちっとも放す気配のない俺に、傷に差し支えるからって言いながら、そっと胸を押して離れた。

 そして恥ずかしそうに俯いたまま、またタオルを取って洗面所に消えた。




    どっちもどっちだな。




 駆け引きのない恋

 だけどそう素直に告げられない恋心



 そう思いながらあの時、俺も赤い顔を隠すようにベッドに身を横たえた。












 そんなことを一瞬に思い出した。





 雪も何かに気づいたのか、俺の顔からその傷に視線を戻した。

 俺はポカンと開けていた口を閉じて同じように視線を落とした。

 雪は何も言わずその傷の上にガーゼをのせ、そして再び包帯を巻きはじめた。


 そして巻き終わり、テープでそれを止めた。


  「 はい、終わり。 」

 そう言って雪の手が俺の腕から離れて行く。
 
 それを見ていた俺は潜めていた息をついた。

 何だか酷く疲れた。

 押し殺そうとしていることを見破られているんじゃないかと思うと、妙な感じだ。

 その反面、どこかで隠す必要もないんじゃないかと思ってたりもする。


 自分自身の訳の判らない心情を紛らわすように俺はその机に置かれたシャツを取ろうとその手を伸ばした。 

 それに気づいた雪の手が先にそれを取り、自分の胸のほうに引き寄せた。

 その様子を?の顔で見る俺。 

 すると俺の伸ばした手を雪の反対の手がそっと触ってきた。

 少し潤んだような雪の瞳

 それを見つめながら俺はその感触にまた時間を忘れる



 やっぱりバレてた?

 それとも君もそう思ってたのかな・・・・?


 俺はじっと雪を見つめた。


 そして彼女の瞳に映る俺を見る。


 癖の強い髪が少し長くなったなって思う。


 外見的にはあの頃と少しも変わっていない俺。

 そして君も変わっていないと思う。

 ただ、人からの視線を釘付けにすることは増えたんじゃないかなぁ。

 それは確か。

 眩しいぐらいの彼女の笑顔は俺の気持ちを泡立たせることがある。


 出会ってからまだ数年しか経っていないのに

 変わってきた俺たちの関係 


  ケンカ相手

  気になる存在 

  片思い?

  そして両思い

  恋人

  婚約者

  ・・・・・・


 本当なら今頃 夫婦っていう形に収まっていたはずなのに


 あの時、1度は止めてしまった時間。

 それを動かす度に絆は深くなるけど、お互いの傷も深くなった。

 それでも俺には君が必要だったから。


 だから、たった1枚の紙切れの事だと言っても、それは俺と雪にとってはとても重大な事になってしまった。


 流される時間


 それはふたりの感覚を不安にさせることもある


 ふと気づいた時に激しい落ち込みを伴って・・・・


    君も俺を必要としてくれてる?


 そんなあの頃の時のような気持ちにまで遡ったりして。


 すれ違いの思いもまだあるけど、それでもお互いに必要としていると感じるからこそ、それをいずれはちゃんとした形にしたいと思う。




 雪の瞳の中の俺は笑っていた。










 「 ・・・・無理しないでね 」




 消えそうな声で呟かれた言葉はこれまで何度聴いただろう。

 「 え? なにか言った? 」

 聞こえなかった振りをして俺はその触れ合った指先をひいた。

 そして、雪を見上げると彼女はきれいな顔をしてただ笑って首を振った。


 「 なんでもないわ。 それより、さっき相原君が何か御用があるようだったけど・・・」


 「 あ、相原のこと・・? それなら通信文をもらった 」


 雪の言葉を確認しなかったのは、隠した彼女の願いを知っているから。

 呟きに応えられる俺はまだいない。

 正直に応えることしかできない俺は、彼女の言葉に「出来ない」としか言えない。

そしてそんな答えしか言えない俺のことも彼女は解かっているから。

  ・・・・・・・・ 

 年を重ねた分、そんな微妙なことを覚えてしまった俺たち。

 繋がっているとわかっているから言葉にしないこともある。

それに、雪の言葉に相原とのやり取りも重なり、思わず苦虫を潰したような顔をしてしまった。


 「 通信文って? 」

 すっかりいつもの生活班長の顔になっている雪は、俺の後ろに回ると隊員服を広げた。
それに腕を通しながら俺は先程のやり取りを思い出しため息をついた。





                       †   †   †  †   †   †





 「 いやぁー また雪さんのドレスアップ見れるんですねー 」







 通信機から相原の嬉しそうな声が飛び込んできた。

 通信文を転送してくれた後、それを見終わった俺はその声にやっぱりかぁと内心大きなため息をつく。

 防衛軍から正式にガルマン・ガミラス帝国からの招待を受けたことを告げられた時から、こんなことになるとは思っていたが、あえてそれを考えずにいた。

 形に拘るわけじゃない。

 俺はただ、デスラー総統にその真意を会って確かめたいって思いだけだったから。

 だからそんなパーティーや祝典への出席に関してのことは予想はしていたけど二の次の、どうにでもなるだろうと思っていた。

 だけど、・・・・。 こうしてまたそれを突きつけられると、避けて通れるものならそうしたいと思っていた俺としては複雑だ。



 相原の声にその隣にいる南部の楽しそうな、浮かれたような声がかぶさる。 
 
 それに第1艦橋の同期クルー4人の顔が浮かんだ。

 俺がそういうことが苦手なことを知っていて、あれやこれやと指図してくれるメンバー

 艦内通信っていう状態での会話だからより一層安心して喋っているんだろうけど、俺はお前たちのおもちゃじゃないぞ!って思う様なことも平気で言う奴ら。

 そう知っているからこんな時は俺も冷めた目をしてしまう。

 そんな俺の状態を気づいているのかいないのか、向こうはやたらに盛り上がっている。



 「 ドレスアップした雪さんってその存在自体が危ないですからね〜 艦長! しっかりエスコートしてくださいね 」

 無意識な時の微笑と少しばかり緊張した面持ちの雪の姿が、一番ソソルと、俺を目の前にしても言う南部。

 そしてそれを思い出して赤くなる俺も俺だけど、確かにそんな雪を放っておけるわけはない。
 
 黙ってしまった俺の様子に気づいた南部が声を殺して笑っている。


   南部〜―― 、後で覚えてろよー。


 「 まぁ、古代艦長 これも任務だと思ってガンバレよ 」

 島の言葉がそれをより一層めり込んだ。

   ・・・・・・

 俺のこだわりが俺だけの小さいものでしかないようで、彼らにとってはそれはただの身に纏うものでしかないのかもしれない。

 黒の艦長服

 それはまだ背負いきれないものを隠すことに精一杯な俺にとっては余裕を持って着られる物じゃないんだけどな

 任務だ 

 だから割り切ろう ―――






                        †   †   †   †   †   †






 「 一応、招待されたわけで、それも親善。表敬訪問になるから礼装しろっていうことらしいぞ 」

 「 え? 誰が? 」

 だから、それを君まで俺に聞く??

 「 僕が 」

 「 まぁ! 」

 驚きよりも、嬉しそうな顔をした雪

 一度聞いてみたかったんだけど、雪 どうしてそんなに嬉しそうな顔をするの?

俺はこれは苦手なんだけどなぁ・・・・


彼女はクスクスと笑う。

それは俺の言葉が俺らしいと思っているからだろうけど、それは楽しそうに笑う。


 「 だって、それを着ていると私たちの『艦長』なんだって、他の誰からもはっきりと判ってもらえるじゃないの。 」


  ・・・・・・・・・・

 確かにそうだ。

見た目からして、軍の関係者はみんな俺が艦長と名乗ると、意外そうな目を向ける。

それはそれで仕方ないと俺自身思っていたが、みんなもそう思っていたということなのだろうか。

同世代や年長者の多かったこれまでとは違い、自分より若い世代が乗組み始めて変わったことは、自分の表面上の態度。

それに俺の立場の変化も加わり今回は当然『最高責任者』としての権威を全面にしてきたつもりでも、同期にはばれてたってことかなぁー・・・・

   ・・・・当たり前か、あいつらの前じゃいつも俺は俺だから

 俺の様子に雪はまた可笑しそうに笑った。 そして俺を正面から見上げた。

 「 だから私もだけど、島君たちが一番あなたの艦長服姿気に入っているんじゃない 」

  ・・・・・・

 真っ向からのその言葉は告白に近くて 





 「 ・・・。 ・・・・・・・ 」


 思わず咳払いなんかして誤魔化してしまった。



 「 ―――、 で、君もね。 」

 「 ? 私? 私がなぁに? 」

 それは彼女のとぼけじゃない反応で・・・。それに俺はまたため息をつく。

 「 ・・・・・て、ねぇ〜、取り合えず・・・・、俺は艦長って言う立場であるけど、連邦政府からしたらひとりの市民で・・・、その連邦政府からは親善大使なんて役目もあるわけで・・・・ 」

 ここまで言ってもピンとこない彼女

 俺もはっきり言えばいいんだけどね



   だからぁ! 俺の“フィアンセ”っていう立場の存在でもある君は

   当然 今回ファーストレディの立場なんだからさぁ

   それに デスラー総統のメッセージに君の名前も入ってたし・・・・


 ぶつぶつと俺は言いながら、今日何度目かの頬の熱さを感じた。


 「 嬉しいわ・・・・ 」


 そう呟いた雪はそっと目を閉じた。






 デスラー総統の雪への思いは、過去の想い出の人と重なる

 俺たちの絆は決して変わっていない

 変わらない気持ちはないけれど、それでも今はまだ変わっていないと思うから





 星の瞬きは今現在のその姿ではない

 それはもう遥か彼方の時だ



 だけど、目の前の君の存在は今現在のもの

 触れられる距離にいる存在で、手を伸ばせはその暖かさを実感することが出来る





 「 雪 ――― 」



 

 俺を見上げる君は 誰に見せたくないほどの美しさで・・・・





 その吐息に 身を浸す




   コダイ くん 




 胸に響くその声とその鼓動に感激すら覚える





 誰よりも大切な君だから

 誰にもそんな君を渡すことも出来なくて

 どんなに辛くても君の元に帰ろうと思った

 地球の美しさより 

 人類の全てより

 君が必要な俺




 そう言葉で伝えられない分 時にはこうして確かめよう




 君を誰よりも想っているって 伝えよう




 すっぽりと俺の腕の中に埋もれる雪の甘い香り


 それに遠い地球が見える





 地球という俺たちの未来


 それを守るために俺はこれからもすべてを賭けるんだろう




 それは君を守ることと同じだから














 ガルマンガミラスまであと2日


 俺たちはデスラー総統に逢う ―――――――






                                        


50000キリリク・美夜さんから頂きました「Vで、ガルマン本星に向かうあたり(到着後でも可)の古代君と雪さん、そして2人を取り巻く人達のお話をお願いします。<略>素直になっちゃった二人を拝見するのもいいかな」のリクエスト。・・・・・「素直」って何が?って気もしますが、こんなふたりで、ほのぼのして下さいませ。
脱稿 2006.07.29.
修正 2006.08.01.